企画品質のばらつき

研究背景

 近年,技術の革新的な進歩により市場の成熟化が進み,基本的な性能が良いと
いうのは当り前となってきています.消費者の願望はそのモノを使用することで
かっこいい自分を演出する、また自分を理想像に近づけるといった方へと向けら
れるようになり,製品に対して何か魅力を感じるような付加価値を求めるように
なっているのです.
 このことから,企業は市場に製品を出すにあたり,ただ製品を設計し、大量に
製造するのではなく,様々な顧客のニーズに合った品質を持つ商品を企画すること
が重要となっています.(図1参照)
 しかし,顧客が要求している品質と,商品企画において定める品質内容にはどう
しても“ばらつき”(差)が生まれてしまいます.本研究室ではこれを企画品質の
ばらつきとして捉えています.
 多様なライフスタイルを持つ顧客から多種多様なニーズを導き出し,定量的に
見ることによって顧客の要求する品質を把握し,企画品質のばらつき低減につな
げることが当チームの目的です.

研究目的

・品質論
環境意識や製品に対する関与などで消費者を層別し,商品コンセプトに対する消費者の
評価のばらつきの要因を突き止めることを目的としています.

・顧客満足の構造
顧客満足と再購入の関係を明らかにする要素であるブランド・コミットメントと顧客
満足との関係を示し,ブランド・コミットメントと顧客満足との構造の違いから顧客
満足がブランド・コミットメントに繋がるかどうかを検証することを目的としています.

・意味差異化法による乗用車のブランドイメージ調査
意味差異化法により顧客ごとのブランドイメージの違いを計測し、2次元上に各ブランド
をプロット.さらには顧客の憧れや潜在ニーズを引き出し,ものづくりに有用なイメージ
の抽出を試みます.

研究方法

目的に沿った論を用いてアンケートを行い,データを収集して解析を進めています.
多変量解析を駆使して,消費者の奥に潜むニーズや特徴を洞察し,製品企画の活用
方法を考察しています.

学部生向け研究内容紹介
(2004年度版PowerpointスライドをPDF化・学内のみ閲覧可)

研究事例

意味差異化法による乗用車のブランドイメージ調査

山本美奈、仁科健、永田雅典、川崎史惠(2007):日本品質管理学会第84回研究発表会

 現在ブランドイメージ調査ではSD法などの定量調査やインタビューなどの定性調査が多く
用いられている。しかし定量調査は自由な意見が得られず、定性調査は得点化が困難である
などの問題が存在する。本発表では両者の良さを組み合わせた意味差異化法をもとに、ユー
ザーごとのブランドイメージの違いを計測する方法を提案する。また乗用車を対象とした調査
を行い、ものづくりに有用なイメージを抽出した事例を紹介する。

狩野の品質要素論に基づく企画品質のばらつきとその活用

仁科健,石井成,鈴木邦昭,井上純矢,服部之総,加藤雅也(2004):日本品質管理学会第34回年次大会

 本研究では,狩野の品質要素論に基づき,企画品質のばらつきを議論した.
環境配慮型製品やユニバーサルデザイン製品を事例として紹介し,企画品質のばらつきを
狩野の品質要素区分の個人差に求め,そのばらつきの要因を消費者の環境意識などの社会
的属性によって説明できるのではないかと考えた。

グリーン・コンシューマーのエコロジー意識と購買イメージとの関係性についての検討

亀谷剛,仁科健,鈴木邦昭(2003):日本品質管理学会第33回年次大会

 本研究では環境配慮型製品を研究対象とし,アンケート調査によって環境意識によって
消費者を類型化した.また,商品の背景には"文化的意味"があるという概念である「ディ
ドロ統合体」を紹介し,環境意識の高い被験者(グリーンコンシューマー)ではディドロ
統合体のような特性が見られるかを検証した.