感性工学

感性工学とは

 消費者の満足を得るためには,どのような製品を提供すれば良いでしょうか.これは,
企業が模索する永遠のテーマです.物が不足していた時代には,安全性や経済性などの基本
的性能を満たすことで,消費者は満足できていました.しかし,物が充足する現代におい
ては,基本的性能はあって当たり前,加えて人間の“感性に合った”製品を作り出さなけ
れば消費者の満足を得ることはできなくなってきています.
 例として自動車を考えると,安全性(ボディ強度など)や経済性(燃費など)の基本的
性能に関する品質は,機械によってその良し悪しを測ることができるため,評価基準が存在
します.しかし,車体カラーなどの感性品質は,人間の感性によって測られるため,評価
基準が存在しません.
 感性工学とは、これら人間の感性によって評価される製品や製品要素を設計・開発する
ための学問です.

学部生向け研究内容紹介
(2004年度版PowerpointスライドをPDF化・学内のみ閲覧可)

研究事例:色空間上の味覚分布

 味覚だけで食をとらえている―という考え方の時代は終わり,現在食とは味覚の他、視覚・
聴覚・嗅覚・皮膚感覚の五感を使って美味しさを感じてとると考えられている。特に,視覚は
味をとらえる上で重要であり,色や外観が美味しさを与える影響は大きい。
 本研究では「色空間上の味覚分布」をテーマとし,色彩から受ける味覚イメージについての
比較検討を行う。そして「色彩から連想する味覚と,味覚から連想する食品の色」つまり、
被験者が味覚から連想する食べ物・飲み物の色と,2次元空間に直接布置した味覚空間との
再現性について考察を行った。

研究事例:感性評価の能力指標とその妥当性

 感性品質に関する研究の最終目的は,人間の感性によって評価される品質を計量化し,
それを製品の物理特性に反映させることにある。しかし,人間の感性とは曖昧なもので,
同じ人間が同じ環境で同じ対象を評価したとしても,同じ結果が得られるとは限らない。
そして,そのような評価をする個人,つまり評価能力の低い個人から得られた情報は,有用な
情報とは言えない。そこで,個人の感性評価能力というものを計量化し,安定した評価構造を
持つ個人を抽出する必要がある。
 そのために本研究では“感覚力”“多様性”“明確性”“分解力”“再現性”に関する
指標を作り,指標の妥当性を検討した。

研究事例:ステアリングホイールの評価実験

 ステアリングホイールを評価する際に主に用いる人間の感覚は触覚である。しかし今日の
ステアリングホイールはデザインも重視されており,特に高級感を演出する車に関しては木目
(ウッド)を一部分・もしくは広範囲にわたって使用している。これらデザインは消費者がステ
アリングホイールを選ぶ際に多大な影響を与えると考えられる。
 ステアリングの基本性能である“握る”といった触感覚に,デザインといった視感覚が入る
ことで消費者の評価はどのように変わるのかについて検討を行った。