オープンキャンパス資料

計算機支援工学における実験計画法

 本研究室では、その名の通り実験計画法に関する研究を行っています。研究対象は近年興隆の
目覚しいシミュレーション実験が中心です。
 現在、産業界でシミュレーション実験に実験計画法を適用することは一般に行われています。
しかし、その手法は経験や勘に頼っている部分が多く、以下のようなプロセスで業務が非効率に
なっていると言われています。

a) シミュレーションモデルと実際の現象の乖離をなくすための合わせ込み
b) 多数の因子(変数)からのスクリーニング(変数選択)
c) モデル構築からロバスト最適化

 これらのプロセスの問題点として、業務が標準化されていない、エンジニアによって結果に
ばらつきが生じる、といったことが挙げられます。統計的な手法を導入し、手法を暗黙知から
形式知化することでシミュレーション実験の更なる効率化を目指します。結果的に、品質の向上、
コストの削減、開発期間の短縮を達成できると考えています。

応答曲面のイメージ

研究事例

CAEにおけるロバスト最適化のための実験計画

石井成、芝田巧、吉野睦、仁科研:日本品質管理学会第37回年次大会

 今日、ものづくりの現場ではコンピュータシミュレーションを用いた設計変数の最適化が盛んで
ある。シミュレーション実験では繰り返し誤差が発生しないために通常の実験計画法の適用は注意を
要する。本研究では、このような特徴を持つシミュレーション実験においてロバスト最適化を行う
ための実験計画を提案する。また提案した方法を事例に適用し、最適化の性能や必要な実験回数に
ついて従来の方法と比較することで検証を行う。

シミュレーションとSQCを融合したロバスト最適化におけるばらつきの取り込み方法−第2報−

吉野睦、仁科研、松田眞一、石井成、芝田巧:日本品質管理学会第84回研究発表会

 今日、実機実験のかわりにコンピュータシミュレーションを用いた設計変数の最適化が行われて
いる。設計因子の水準により誤差の影響度合いが異なることを利用したロバスト最適化も行われて
いる。しかしシミュレーションでは設計因子として取り上げない限りその因子の影響は評価できない。
ロバスト最適化を行うにはこの対策が必要である。影響因子の抽出については過去報告してきたが、
本報ではロバスト最適化実験について報告する。

計算機支援計画の頑健性の検討

芝田巧、石井成、仁科健(2006):日本品質管理学会第82回研究発表会

 計算機支援計画であるD-optimal計画はモデル構築に必要な最少の実験点でしか実験を行わない
ため,実用にあたっては推定精度の確保を目的として追加実験を行うことがある.また,最適
計画は仮定したモデルに依存するため,変数選択によりモデルを変更すると最適性が失われる
恐れがある。
 本研究ではこのような状況でのD-optimal計画の最適性を検討し,追加実験およびモデル変更に
対する頑健性を評価した.

3^3計画の実験空間

CAEを用いた最適化プロセスにおける変数スクリーニングの効率化

吉野睦、入倉真、仁科健、松田眞一、石井成(2006):日本品質管理学会第81回研究発表会

統計的方法を活用したシミュレーションモデルの合わせ込み

近藤総、仁科健、吉野睦、松田眞一、石井成(2005):日本品質管理学会第35回年次大会
 実機実験と理論値でのシミュレーション実験との間に結果の整合性がない時,シミュレー
ションモデルの材料物性値などを理論値から変更することで応答を実機実験のものに近づける
“合わせ込み”という作業が行われている.しかし“合わせ込み”はこれまで技術者の経験や
勘といった曖昧なものに依存してきたため,その方法は確立されていない.
 本研究ではタグチメソッドの2ステップ法を活用した合わせ込み方法を提案し,事例への
適用によって有効性の確認を行った.

Computer Aided Designを利用した追加実験方法の検討

石井成、松井喬昭、仁科健(2005):日本品質管理学会第78回研究発表会

 古典的な実験計画では対応できない状況にて、Computer Aided Designによるカスタム計画が
利用されている。カスタム実験における最適計画の1つにD-最適計画がある。本研究では、
D-最適計画に基づいて行われた実験において、推定精度向上のための追加実験方法の検討を
行った。数値シミュレーションにより、追加実験におけるD-最適計画の最適性への影響と、
追加実験点を決定する指針を明らかにした。